図書カード:No.00002
文献名 | 河野常吉著作集 別巻II 北海道殖民状況報文 根室國 |
文献よみ | このうつねきちょさくしゅう べっかん2 ほっかいどうしょくみんじょうきょうほうぶん ねむろのくに |
編著者 | 河野常吉 |
編著者よみ | こうのつねきち |
出版社 | 北海道出版企画センター |
初版発行日 | 1975年9月10日 |
調査に使用 | 1975年9月10日初版 |
底本 | 北海道殖民状況報文 根室國 |
底本よみ | ほっかいどうしょくみんじょうきょうほうぶん ねむろのくに |
著者名 | 北海道廳殖民部拓殖課 |
著者名よみ | ほっかいどうちょうしょくみんぶたくしょくか |
初版発行日 | 1898年3月28日 |
北海道殖民状況報文 根室國
緒言
当道(北海道のこと)での拓殖事業の発達・進歩にともなって、利益を得る人々と、損失をこうむる人々の両方が生まれてしまうのは、しかたのないところである。「殖民地」の沿革をたどり、現状を踏まえて将来の計画を立てることは、ただ当局者にとって必要というだけでなく、志のある人にとっても研究対象とすべきテーマであろう。
さきに北海道庁・前殖民課長の白仁(武)参事官から、全道の殖民概況と主だった殖民地の現状を調査せよと命令が出され、現殖民課長の高岡(直吉)参事官が、各地の地理・気候・沿革・世帯人口・産業などについての調査を開始した。「拓殖」の進展度がいちばん低い北海道東部から着手し、ようやく根室國に関する報告書を脱稿して、いま出版に向けた活字組みが進んでいる最中である。
もとより不完全な報告書ではあるが、今後の計画研究において少しは役に立つところもあるだろう。この調査の目的とこれまでの経緯についていくばくかを記して巻頭言とする。
1898(明治31)年1月
北海道庁殖民部
例言
- このリポートは、1896(明治29)年9月9日から10月1日まで22日間の現地調査を行ない、公文書・旧記などを参照して編集したものである。現地調査の日数がわずかだったため、やむをえず精密さを犠牲にしている。
- このリポートは「総説」「郡町村」の二部構成となっている。「総説」では国の概略を述べ、「郡町村」には各郡町村の個別状況を記した。
- 根室国では、ほとんどの郡町村の境界が不明瞭である。国・郡の境界線は北海道庁実測地形図に依拠し、町村の境界線は地元住民の判断に従ってだいたいの線を引いた。添付した地形図で、これまで不明瞭のままにされてきた境界線については、今後の便宜を考慮して、仮の境界線を描き入れたところもある。たとえば釧路国虹別村を根室国内に組みこむなどしている。ただし虹別村の概況は釧路国の巻に記載し、添付の地図には、釧路国と根室国の境界線(推定)を点線で表示した。
- 「未開原野」は、いずれ開発計画を立てる際に非常に重要になると考えられるが、限られた期間内では現地調査できなかった。詳細は『殖民地選定報文』に譲って、この報告書では概略だけを記述した。
- 戸数・産業・輸出入そのほかの統計データは、1895(明治28)年度の官庁および漁業組合の調査結果に基づいているが、それらの中には正確性を欠いているものもあった。その例をひとつふたつ挙げると、たとえば現在戸数は、役所の記録にある出入り人数から算出したが、実際には役所に届けないまま行ったり来たりする人が少なくないため、記録上の数字と実際の数字が食い違っている場合がある。また、水産物に関するデータは水産業者の申告する数値に基づいて算出しているので、実際の漁獲量を過小評価してしまっている傾向にある。とはいえ、いまそれを補正するすべはない。
- この報告書の調査は、北海道庁事業担当者である河野常吉に担当させた。
1898(明治31)年1月 北海道庁殖民部
(同書冒頭に掲げられた「緒言」「例言」から。現代語訳・平田剛士)