図書カード:No.00021

北海道山林史

文献名 北海道山林史
文献名よみ ほっかいどうさんりんし
著者名 北海道
著者名よみ ほっかいどう
発行 北海道
初版発行日 1953年3月25日
調査に使用 1953年3月25日発行初版

本書「序」から(原著の難読漢字は、常用漢字に置き換えたり、ひらがなに開いたりしています。(森・川・海のアイヌ先住権研究プロジェクト)

明治二年はじめて、本道に開拓使がおかれ、北門の宝庫としての北海道開拓の偉業に着手して以来、幾多の変遷を経ながらも、諸産業の興隆と開発の業績が着々と進行しつつあることは、真に慶賀に堪へぬ次第である。 もとより、本道の森林の推移を通説するとき、今日のごとき拓殖発展の過程においては、新開諸国の例にもれず、すくなからぬ森林資源の犠牲が払われたことは、いうまでもないが、しかもよく、拓殖事業の一大財源として、その使命をまっとうしたのみでなく、官林種別調査の方針による林種区分にもとづき、拓殖事業との調整をはかりつ丶、各種の森林経営が、それぞれその緒についたことは、ひつきょう開道以来いくたの難局に処し、真に本道永遠の発展のため寄与せられたる官民諸先輩の賜物である。

わが国は、敗戦によって領土の四割余を、林野面積はその五割を失った。しかして、北海道についてみるに、森林面積において二割、蓄積において一割を減じたが、なおかつ、全国林野にたいし、面積は二割余、蓄積は三割強を保有し、北海道森林のもつ重要性は戦前にまして、一そうの度を加えたものというべきである。

今本史を概観するに、旧藩時代すでに、東京および大阪地方にも木材を移出し、明治後期に至つては、中華民国より欧米各国および大洋州方面に至るまで、販路を拡張し多大の声価をあげたのみでなく、わが国輸出貿易上に貢献したことも、すこぶる大きかつたことを知るのである。

一面また、森林資源の保続のため保護育成につとめ、開道前後、森林のきわめて豊富なる時代にあつても、当局者ならびに幾多の造林先覚者が、森林資源の増殖につとめた事蹟をみるとき、真に敬仰にたえないものがある。更にまた林業に関する諸制度・技術・経済ならびに政策など、史実にもとづき系統的に、その沿革をつまびらかに叙述されている。

「温故知新」という言葉があるが、われわれは、すべからくこれを有意義に活用し、先人の足跡をたずねて、計画実施の指針となし、もつて本道森林のもつ重要なる使命の発揚にいよいよ努め、その期待にそうべく最善の努力を払うべき秋であると信ずる。

時あたかも昭和二十三年は、開道以来八十周年にあたるので、これが記念事業の一つとして、かねて要望されていた、「北海道山林史」の編集作業を企てたのである。

今や、多年の懸案たりし林政の統一問題も円満解決をみたばかりでなく、戦後に於ける森林復興計画も確立され、ここに本道林業の再発足をみんとするにあたり、この企ての決して無意義でなかつたことを真によろこぶものである。

本書の編集については、別項のごとく、編さん委員会組織の下にこれに当たつたのであるが、この重任を果たされた委員各位の尽力と、貴重なる資料を寄せられたる方々の厚意に対して、心からなる謝意を表する次第である。

昭和二十八年三月
北海道知事 田中敏文